「僕の言っていることは間違ってはいないはずだけど」
確かに、男の言っていることは何一つ間違ってはいなかった。
しかし、それだけにすぎなかった。
男が話し終わるまでの3分半の間、女は沈黙を守り20秒の間を開けて口を開いた。
「あなたは間違ってはいないわ、
むしろ問題は「正しい」ということなのよ」
男は理解が追いつかないのか、もしくは
追いつきすぎているのにも関わらず、なぜ話が円滑に前進しないのか
がわからなかった。
女は、男の顔全体で表現した不可思議を気にも留めないまま
運ばれてきたパスタに手を伸ばした。
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